板バネ(板ばね)の材質とその特徴 ― 用途・性能から選び方まで製作現場が解説
板バネ(板ばね)の性能は、材質選定によって大きく変化します。ばね性、耐食性、導電性、耐熱性、軽量性など、使用環境に合わせて材質を適切に選ぶことが重要です。
本記事では、現場でよく使用される 鉄系・ステンレス系・銅合金系の違い をはじめ、チタン・インコネルなど特殊材質の特徴まで徹底比較。図面を検討中の設計者・技術者の方がすぐに判断できるよう、用途・特性から材質の選び方をまとめました。
板バネに使われる材質の種類と特徴
板バネ素材は大きく以下の5分類です。
- 鉄系バネ材(SK材/SUP材)
- ステンレス系バネ材(SUS301/SUS304)
- 銅・銅合金バネ材(りん青銅/ベリリウム銅/洋白)
- チタン・チタン合金
- インコネル・ハステロイなどのニッケル合金)
材質ごとの機械的性質と特性を徹底比較
ここでは、主要なバネ材の具体的な機械的性質を比較します。設計選定の基礎情報としてご利用ください。
主要バネ材の機械的性質比較 (H調質または同等基準)
| 材質名 | 引張強さ (MPa) | 0.2%耐力 (MPa) | 伸び (%) | 硬さ (HV/HB) | ばね限界値 (MPa) |
|---|---|---|---|---|---|
| SUS304 CSP (H) | 1130以上 | 880以上 | – | 370以上 | 390以上 |
| りん青銅 (C5210 H) | 590〜705 | – | 20以上 | 185〜235 | 390以上 |
| ベリリウム銅 (C1720 H) | 685〜835 | – | 2以上 | 210〜270 | – |
| 純チタン (TP340C) | 340〜510 | 345以上 | 18以上 | – | – |
| インコネル X-750 | 1167〜1422 | 824〜1128 | 15〜30 | 313〜400 | – |
注:インコネルの強さ・耐力は熱処理1 (kg/mm^2) を N/mm^2 に換算。
用途別に適した板バネ材質を選ぶ
ユーザーが最も知りたい「用途から選ぶパターン」を整理しました。
- ばね性・強度・成形性を重視 → 鉄系(SK材/SUP材)
車両・産業機器の一般スプリングに広く使用。 - 耐食性と安定した反発力が必要 → ステンレス系(SUS301/SUS304)
電子部品、医療機器、通信機器、湿度変化のある環境に最適。 - 導電性+バネ性が必須 → 銅系(りん青銅/ベリリウム銅)
コネクタ、接点端子、精密スイッチなど電気性能が求められる部品向け。 - 軽量化・耐疲労性が必要 → チタン
軽量で強度が高く、耐食性も優秀。航空・輸送機器に採用例多数。 - 高温環境でバネ特性が必要 → ニッケル合金(インコネル/ハステロイなど)
高温下でも変形しにくく、化学・熱機器で使用。
材質別の詳しい特徴とメリット・デメリット
■ 炭素鋼系バネ材(SK材・SUP材)
メリット
- 強度・ばね性に優れる
- コストパフォーマンスが良い
- 成形加工しやすい
デメリット
- 錆びやすい(表面処理で改善可能)
- 熱処理が必要で歪みが生じやすい
■ ステンレス系バネ材(SUS301・SUS304 CSP)
メリット
- 高い耐食性
- 温度変化に強く長期安定
- ばね性と強度のバランスが良い
デメリット
- 導電性は低め(ただしニッケルメッキなどで向上は可能)
SUS304 CSP 機械的性質(詳細)
| 調質 | 引張強さ (N/mm2) | 伸び (%) | 硬さ (HV) | 耐力 (N/mm2) | ばね限界値 (N/mm2) |
|---|---|---|---|---|---|
| 1/2H | 780以上 | 6以上 | 250以上 | 470以上 | 275以上 |
| H | 1130以上 | – | 370以上 | 880以上 | 390以上 |
■ りん青銅(C5210)
メリット
- 導電性とバネ性のバランス
- 成形性が良い
- 弾性疲労に強い
デメリット
- 炭素鋼やステンレスに比べると強度が劣る
C5210 機械的性質(詳細)
| 調質 | 引張強さ (MPa) | 伸び (%) | 硬さ (HV) | ばね限界値 (MPa) |
|---|---|---|---|---|
| 1/2H | 470〜610 | 27以上 | 140〜205 | 245以上 |
| H | 590〜705 | 20以上 | 185〜235 | 390以上 |
| SH | 735〜835 | 9以上 | 230〜270 | 510以上 |
■ ベリリウム銅(C1720)
メリット
- 銅系バネ材の中でも最高クラスの強度
- 高導電性
- 高寿命の精密バネに最適
デメリット
- 熱処理が必要
C1720 機械的性質(詳細)
| 調質 | 引張強さ (MPa) | 伸び (%) | 硬さ (HV) |
|---|---|---|---|
| 1/4H | 510〜620 | 10以上 | 145〜220 |
| 1/2H | 590〜695 | 5以上 | 180〜240 |
| H | 685〜835 | 2以上 | 210〜270 |
■ 洋白(C7701)
特徴
- 加工しやすい
- 寸法安定性が高い
- カメラ部品に使用されるケースが多い
C7701 機械的性質(詳細)
| 調質 | 引張強さ (N/mm2) | 0.2%耐力 (N/mm2) | 伸び (%) | 硬さ (HV) | ばね限界値 (N/mm2) |
|---|---|---|---|---|---|
| 1/2H | 540〜655 | 390以上 | 8以上 | 150〜210 | 390以上 |
| H | 630〜735 | 500以上 | 4以上 | 180〜240 | 480以上 |
| SH | 765〜865 | 680以上 | – | 230〜270 | 620以上 |
■ チタン(TP270C / TP340C)
メリット
- 非常に軽い
- 疲労強度に優れる
- 高い耐食性
チタン 機械的性質(詳細)
| 規格 | 引張強さ (MPa) | 0.2%耐力 (MPa) | 伸び (%) |
|---|---|---|---|
| TP270C | 270〜410 | 165以上 | 10以上 |
| TP340C | 340〜510 | 345以上 | 18以上 |
■ インコネル X-750・600(耐熱超合金)
メリット
- 数百℃の高温でも特性が安定
- 耐酸化性・耐食性が非常に高い
- 高温下でもバネ特性が保持される
インコネル X-750 機械的性質(詳細)
| 熱処理 | 引張強さ (MPa) | 0.2%耐力 (MPa) | 伸び (%) | 硬さ (HB) |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 1167〜1422 | 824〜1128 | 15〜25 | 313〜400 |
| 2 | 1108〜1334 | 794〜981 | 15〜30 | 300〜390 |
注:kg/mm^2 を N/mm^2 に換算
板バネの板厚・公差・物性
材質選定時は「板厚・硬さ・公差」が最も重要です。
- ステンレス系(SUS301)
- 板厚:0.02~0.3mm
- 公差:±0.003〜±0.01mm
- 銅系(りん青銅・ベリリウム銅)
- 板厚:0.03~0.5mm
- 公差:±0.005〜±0.015mm
- インコネル/チタン
- 板厚:0.05~0.5mm
- 注意点:反り・曲げ精度の管理が必要
材質で迷ったら?選定時に確認すべきチェックポイント
- 使用環境(温度・湿度・雰囲気)
- 必要な反発力・荷重・ストローク
- 導電性の有無
- 腐食環境かどうか
- 軽量性が必要か
この5点を確認すると、材質選定のミスが大きく減ります。
こだま製作所の板バネ製作が選ばれる理由
- 特殊材質(チタン/インコネル/ハステロイ)の実績が豊富
難加工材にも対応できる加工ノウハウを蓄積。 - 金型レス加工で試作〜小ロットに最適
1枚から1000枚まで柔軟に対応可能。図面の初期試作や少量多品種に強み。 - ±0.02mm精度の精密加工に対応
薄板・微細加工領域で多数の納品実績。 - 材料在庫が豊富で短納期が可能
ステンレス・銅系・特殊材など幅広いロットを確保。 - 研究開発・設計部門からの依頼多数
用途に応じた材質提案・反り対策・形状安定化も相談可能。
お問い合わせ
図面・用途・使用環境に合わせて、最適な板バネ材質をご提案します。試作 1 枚から対応可能です。お気軽にご相談ください。
