熱処理

熱処理とは

熱処理とは、金属材料に加熱・冷却の操作を加えて内部組織を変化させ、硬さ・靭性・弾性などの機械的性質を改善する技術です。
製品の用途や材質によって目的・方法は異なり、板バネ・接点・精密金属部品などでは、
硬度調整・残留応力除去・耐摩耗性向上・寸法安定性確保を目的として行われます。

こだま製作所では、これらの部品に合わせて最適な熱処理条件を選定し、
試作から量産まで安定した品質で対応しています。

硬さの基準と測定方法

熱処理の目的は「硬さ」と「靭性(粘り強さ)」のバランスを取ることにあります。
金属の硬さを評価する際、代表的な指標としてビッカース硬さ(HV)ロックウェル硬さ(HRC)があります。

両者は測定方式が異なるため、同じ材料でも数値が直接一致するわけではありません。
そのため、変換表をもとに対応値を確認して使用します。

※熱処理後は、加熱・冷却時の熱応力により、わずかな変形・反りが発生する場合があります。
特に薄板部品では、寸法補正や冶具治具による固定が重要となります。

主な熱処理方法と特徴

● 焼入れ・焼戻し(調質処理)

炭素鋼などを赤熱状態まで加熱し、油や水などで急冷することで硬度を高める処理を「焼入れ」といいます。
焼入れによって高い硬度と耐摩耗性が得られますが、そのままでは靭性が低く脆くなるため、
再加熱して適度に軟化させる「焼戻し」を行い、硬度と靭性のバランスを調整します。

この一連の工程は「調質処理」とも呼ばれ、ばね材・工具部品などに適用されます。

● 焼なまし(応力除去焼なまし)

焼なましは、金属を適切な温度に加熱後、炉内でゆっくり冷却する処理です。
目的は、加工硬化や残留応力の除去・組織の均質化です。

こだま製作所では、板バネや薄板金属部品に対して低温焼なまし(応力除去焼なまし)を行うことが多く、
弾性限・耐力を安定化させてバネ性の維持(ヘタリ防止)を図ります。

特にSUS系ばね材の熱処理として有効ですが、
製品用途によってはコスト面から未処理での使用も選択されます。

● 固溶化熱処理(溶体化処理)

合金元素を高温で母材中に均一に溶かし込み、急冷して析出を防いだ状態を保持する処理です。
ステンレス鋼(オーステナイト系)では、
炭素がクロム炭化物(Cr₂₃C₆)として析出し腐食を引き起こすのを防ぐために行われます。

通常は1,000℃前後で加熱後、急冷処理を実施。
JIS規格でも機械的性質の基準を満たすための標準処理として定められています。

非鉄金属では「溶体化処理」と呼ばれ、
アルミニウム合金などではJIS上「焼入れ」と表記される場合もあります。
用語は異なりますが、目的はいずれも合金成分の均質化と機械特性の安定化です。

● 析出硬化(時効硬化処理)

焼入れ後、一定温度で保持して微細な析出物を形成させ、硬度を高める処理です。
主にベリリウム銅(C1720)析出硬化系ステンレス(SUS631)などに適用されます。

この処理により、高い弾性限と耐疲労性を付与でき、
精密スプリングや接点部品など、繰り返し応力が加わる用途に効果を発揮します。

● サブゼロ処理(深冷処理)

焼入れ後に0℃以下(−80℃前後)まで急冷する処理です。
残留オーステナイトをマルテンサイトに変態させ、
より高い硬度と寸法安定性を得ることができます。

特に時効変形や残留応力による変寸を抑えたい精密部品に適用されます。
サブゼロ処理を併用することで、耐摩耗性と長期安定性をさらに向上させることが可能です。

こだま製作所の熱処理対応

こだまでは、薄板ばね・接点・精密機構部品などを中心に、
用途・材質に応じた最適な熱処理仕様を提案・管理しています。

  • 炭素鋼・ステンレス鋼・銅合金・ベリリウム銅などへの適用実績
  • 試作時の材質特性データ(硬度変化・変形量)の提供
  • 外注熱処理メーカーとの品質連携による安定した管理体制
  • 熱処理後の寸法補正・仕上げ研磨・再計測までの一貫対応

板厚・形状・寸法公差に応じて、
焼入れ温度・時間・冷却速度の最適化を行い、
機能性と安定性を両立させています。

技術まとめ

こだまの熱処理技術は、材料特性を最大限に引き出しながら、
変形リスクを抑えた高精度・安定品質の金属処理を目的としています。

  • 焼入れ・焼戻しによる強度向上
  • 焼なましによる応力除去・バネ特性改善
  • 固溶化処理による耐食性・靭性向上
  • 析出硬化・サブゼロ処理による精密部品の安定化
  • 板厚・形状に応じた条件最適化と品質保証

これらの技術を組み合わせることで、
精密板金・スプリング・接点部品の機能信頼性を高める熱処理対応を実現しています。

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